学校全体での取り組み:チームとのミーティングと研修 2/26(金)

 昨日とはうってかわり、今日はにぎやかな集まりとなった。参加者は45人ほど。Jackson Elementary School のほとんど全員の教員が参加しての校内研修だ。年に数回、こうした研修の日があり、子どもにとっては休日になるそうだ。

8:00 “Responsibility Committee”のミーティング

 School-Wide Interventions(以下、SWIと略)の中核チームのミーティング。教頭と6人の教員、Sugai博士(そして私)。この時間、他の教員はそれぞれが所属する他のチームに分かれてミーティング。教頭がプロジェクトの進み具合、成果について報告する。その後、メンバーに何か問題点がないかどうか聞く。休み時間や放課後に、校庭のある部分で、子どもが走り回っていいのか、歩かなくてはいけないか、ルールが明確ではないと声が上がる。

 SWIでは、子どもにどんな行動が望ましいか、どんな行動が望ましくないか、具体的に一貫して教える。ある先生がだめと言って、他の先生がokというと子どもは混乱するし、言い訳を与えるきっかけにもある。この学校では大きなルールとして、(1)「自分を大切に」“Respect Yourself”、(2)「友達を大切に」“Respect Others”、(3)「ものを大切に」“Respect Property”をかかげ、これを徹底的に教えている。そして、教室や廊下、校庭、食堂、図書室、トイレなどで、具体的にはどういう行動がそれぞれこれら3つのカテゴリーにあてはまるか、例をあげ、表にして、教員の中での共通認識としている。こうしたルールを違反した子どもには注意をしたり、まだ学習していないようなら練習したり、間違いを起こす前にヒントを与えたりする。チームの仕事の1つはこうしたルールづくりにある。

 ルールの一部に不整合があるということから、議論は、校庭のその部分で走り回らせるべきか、歩かせるべきかという話になった。意見が分かれる。どちらにも言い分があり(走り回ったら危険派 vs そんなに制限したら自由に遊ぶことができない派)、膠着しかけたとき、Sugai博士がアドバイスする。まず、こうした問題をどのように解決するか、その手続が定まっていないので、それを決めて欲しい。それから、意思決定をするときには、データをもとに決めて欲しい。たとえば、走り回ってけがした子どもがどれくらいいるかなど)。Sugai博士の役割は、企業などで品質管理のチームをトレーニングするときのファシリテータに近い。“Responsibility Committee”をいかに自立したチームとして学校の中で機能させるかをターゲットにしたアドバイスである。

 そのあと、Sugai博士から、長期的な展望(2-3年後)についても考えてほしいという要望がだされた。すると、チームのメンバーの数人から、管理職が変わると何もかも変わってしまうから、あまり長期的な計画をたてても仕方がないというような悲観的な意見がでた。どうやら、ティム校長の前の前の校長のときにはうまく行っていたのが、新しい校長がきて、それまでのやり方をすべて変え、教員の意見を無視して独断専行し、学校がめちゃくちゃになってしまったようだ。私も首になりそうだったんだからと、自分の隣に座っていた女性が耳打ちしてくる。

 これに対しSugai博士は、確かに管理職がかわって学校がかわってしまうことはある。そして現実に管理職の配置替えはけっこうある。しかし、チームとしてプロジェクトを動かし、手続を正式なものにしておけば、新しい校長が赴任してきても全く無視することは、少なくともそうした準備をしておかないよりはできにくくなるはずだ、と説得ムード。何人か、賛成意見がでて、また少し議論があったが、最後は手続を正式にするためにマニュアルを作っていくことで合意する。

9:30 “Responsibility Committee”からの報告

 図書館の広い部屋に全員が集まり、全体の研修が始まる。まずは、教頭からプロジェクトの進捗が今度は全教員に向けて報告される。アメリカの多くの学校では、子どもが重大な問題行動を起こしたときには“校長/教頭先生送り”(Office Referral)になる。これは書類として残るので、毎月何件こうした指導が発生したかが記録に残る。アイザック教頭の報告によれば、一昨年に比べ、プロジェクトが始まってから“校長/教頭先生送り”は30%減少したとこのこと。また、これまでは何回も繰り返して“校長/教頭先生送り”になる子どもが多かったが、こうした常習犯の数が減ったとのこと。

 教頭からの報告に関して、校長がこれもみんなのおかげと感謝を示す。そして、他にもどんな改善が見られるようになったか、手をあげて報告してほしいときく。次々に手が上がり、子どもにこんな変化があった、こんなことがあったと報告が続き、そのたびに拍手が起こる。学校全体がチームとしてプロジェクトを推進している雰囲気が伝わってきた。

 

 この後は、Sugai博士によるワークショップが昼食をはさんで行われた。

10:00 行動マネジメントについて復習

10:45 大きな問題を抱えた5%の子どもへの対応

12:00 ファンクショナル・アセスメントの基礎

13:00 ファンクショナル・アセスメントをつかった行動マネジメントプログラムの組み方

14:00 秋学期に向けての計画

 どのトピックについても教員から質問や意見が活発にあがり、それにSugai博士が答えていくという非常に活発なワークショップだった。大学院の講義、3週間ぶんくらいの内容ではないだろうか、と自分はくたくたになりながらそう思った。Sugai博士から許可をいただけたので、近く、コラボネットのワークショップでこの内容をまとめて報告しよう。

 

 たった2日間だけで、まったくのかけあし見学だったが、大学教官が学校改善に貢献しているベストプラクティスの一例をかいま見たような気がする。また、教師の専門的な力は、教育力だけではない。チームで仕事をしていくコミュニケーション、そしてチームをひっぱるリーダーシップの重要性を再認識した。